琉球国(現、沖縄県)の歴史をテーマにしたドラマ「テンペスト」をご存知ですか?
琉球国末期の首里城を舞台に、男装して王府に仕えた聡明な女性の波瀾万丈な人生を描いた、
仲間由紀恵さん主演の歴史ドラマです。
琉球という国がどのようにして現在の沖縄県になったのか、
沖縄の歴史の勉強にもなるこのドラマ。
ですが、どこまでが本当の話なの?
主人公の寧温って実在の人物?
寧温を取り巻く登場人物たちは?
この記事では、琉球国の歴史的背景も交えながらドラマのあらすじを紹介。
また、たくさん出てくる登場人物の相関図についてもわかりやすく解説しています。
是非、最後までお読みください。
「テンペスト」琉球の歴史ドラマは実話なのか?
史実に基づいたフィクション
2011年に NHK BSプレミアムで放送された歴史ドラマ「テンペスト」(全10話)。
沖縄県出身の小説家、池上永一さんによる歴史小説「テンペスト」が原作です。
つまりテンペストの物語自体はフィクション、ということになります。
もちろん、主人公の「真鶴/孫寧温(そん ねいおん)」も架空の人物。
残念…
あんなに聡明で勇敢な女性が、実在の人物だったらワクワクするのに…
と思うのは私だけではないでしょう。
真鶴/孫寧温は想像上の人物ですが、寧温のモデルかもしれない実在の人物はいました。
牧志朝忠(まきしちょうちゅう)という琉球国末期の官僚です。
朝忠は首里で身分の低い侍の子として生まれ、彼の身分では到底手の届かない、
首里王府の重臣にまで登りつめました。
テンペストの主人公、真鶴も本来であれば、絶対に王府の役人になれるはずがないのに、
彼女の類まれなる知性と性を偽るという大胆な行動によって王府官僚となりました。
更に、中国語や英語、フランス語など語学に堪能だった点、
あまりにも優秀であったために周囲からの嫉妬をかい、投獄された点なども
真鶴/寧温と朝忠はよく似ています。
「テンペスト」 琉球の歴史ドラマ 時代背景
ドラマ「テンペスト」はあくまで小説。
登場人物は主人公である真鶴/寧温も含め、実在の人物ではない人も多いです。
しかし物語の舞台となっている琉球王国の歴史的背景は史実に基づいています。
琉球の歴史も交えて、ドラマのあらすじを紹介しましょう。
テンペストの舞台となった琉球国とは、どんな国?
1429年に誕生し、中国や日本、東南アジアとの貿易で繁栄した琉球国。
当時は、中国(清王朝)と冊封(さっぽう)関係を結んでいました。
中国の皇帝と従属関係を結ぶことで、国の安定を図るためです。
そんな琉球国の繁栄に目をつけたのが、当時の薩摩藩。
1609年、薩摩藩(島津氏)は武力で琉球に侵攻してきました。
結果、琉球は薩摩と清の間に挟まれ、どちらにも従うという微妙な状況に置かれてしまいます。
武器を持たず知恵と外交力で国を守る「非武装中立国家」であった琉球国。
王府の官僚たちは、持てる限りの知恵を駆使してその立場を守ろうと奔走します。
そして物語の最後、時は1879年(明治12年)。
明治政府が首里城の明け渡しを命じ、600人もの警察が城に乗り込んできます。
これによって琉球王国は解体されて沖縄県となりました。
これが、「テンペスト」の舞台となった琉球国の時代背景です。
私は「テンペスト」に出会うまで、歴史というものに全く関心がありませんでした。
ですが、「テンペスト」のおかげで、琉球王国の歴史にとても興味を持つようになり、
さまざまな書籍を読み始めました。
琉球国の歴史を知れば、その周辺の薩摩や清の歴史も知りたくなる。
そうやって、歴史そのものへと関心が広がりつつあります。
難しい歴史書を読むことに抵抗がある人でも、「テンペスト」ならエンタメの要素もあるので、
歴史への興味関心の扉を開く足がかりとして、個人的にはとてもおすすめです。
史実と食い違っていると指摘される点
たとえばこの物語に出てくる聞得大君(きこえのおおきみ)、「真牛(もうし)」。
ドラマの中では尚育王(1813~1847、即位1835年)の姉にあたる人物です。
しかし史実では、尚育王の時代の聞得大君は15代目国王尚温の妃。
尚温王は尚育にとっては叔父に当たるので人なので、聞得大君は叔母。
ドラマでは尚育王の姉を聞得大君としたのは、原作の小説がそのようになっていたからでしょう。
原作者の池上さんがどうしてそのようにしたのかは不明です。
他にも、寧温がつけていたハチマチ(王府の役人が頭に被っている帽子のようなもの)の色が、
その場面での寧温の階級の官僚がつける色とは違っていたり。
そのような、歴史の専門家からするとおかしいと感じる点があったため、
一部の視聴者の間では議論も沸き起こりました。
しかしこのドラマ制作にあたっては、琉球歴史研究家の上里隆史さん他、
歴史の専門家が検証に関わっています。
それでも史実と違う内容があったのは、制作サイドやキャストとの兼ね合いなど、
いろいろな事情があったのでしょう。
上里さん自身、時間とエネルギーをかけて検証したことがドラマの中に反映されておらず、
複雑な心境を味わったことが少なからずあったようです。
その辺りの裏話は、上里さんの著書「あやしい!目からウロコの琉球・沖縄史」の中で、
詳しく語られていますので、興味のある方は是非、読んでみてくださいね。
「テンペスト」 琉球の歴史ドラマ あらすじ
このドラマの主人公は、孫 真鶴(そん まづる)という一人の少女。
彼女は聡明で、学問への関心もとても高い。
しかし彼女の父は待望の男児ではなく女児が生まれたことに失望し、
真鶴のことには無関心。
真鶴には、父が孫家の後継として迎え入れた養子、嗣勇(しゆう)という兄がいました。
しかし、真鶴とは対照的に学問には一切興味がない嗣勇。
父からの重圧に耐えられなくなった兄は、ある日、忽然と姿を消してしまいます。
「兄に代わって、私が男として生きていく」
そう決心した真鶴は、名を「孫寧温(そんねいおん)」と改め、超難関の試験に合格。
念願かなって、琉球王府の役人となったのですが…。
寧温にやっかんだ役人たちの陰謀、
鋭い霊力で寧温の正体を暴き利用しようとする最高位の神女、聞得大君、
琉球を支配しようと押し寄せてくる列強国との駆け引きなど。
次々と苦難に襲われる寧温ですが、敵対関係にあるはずの薩摩の武士、
朝倉雅博と禁断の恋に陥る…。
女として生きるのか?
それとも国を守る役人としての偽りの性を貫くのか?
寧温/真鶴の人生は、まさに波瀾万丈!
性を偽って王府に上がる、という設定だけでもすごいのですが、
後半は、首里城内で男性と女性の早替わり、という凄技を見せる真鶴/寧温。
個人的な感想ですが、このドラマのあまりにもスケールの大きいストーリー展開は、
原作の池上永一さんの想像力がまさに大爆発を起こしたとしか言いようがないです。
よくまあこんな展開を思いつくな、という感じ。
そしてあまりにも非現実的な展開や、幻想的な世界観を映像化している
NHKの制作スタッフにも脱帽です。
「テンペスト」琉球の歴史ドラマ 登場人物相関図
仲間 由紀恵:真鶴(まづる)/孫寧温(そん ねいおん)
・・主人公。男性と偽り王府にあがり、さまざまな争いごとに巻き込まれ、一度は投獄される。
しかしその後、女性として王室に返り咲くなど、まさに波瀾万丈の人生を送る。
谷原 章介:浅倉雅博(あさくら まさひろ)
・・薩摩の武士で真鶴の恋の相手。
塚本 高史:喜舎場朝薫(きしゃば ちょうくん)
・・寧温が「兄さん」と慕う同僚にして親友。密かに寧音に恋心を抱く。
GACKT:徐丁垓(じょ ていがい)
・・清から追い出されるように琉球に来た宦官。
寧温の正体を見破り、琉球を乗っ取るために利用しようとする。
高岡早紀:聞得大君(きこえのおおきみ)/真牛
・・王宮の最高位の神女。寧温を利用しようとして、逆に失脚。娼婦に身を落とす。
高橋 和也:尚育王(しょういくおう)
・・ 第18代目 琉球国王
染谷 将太:尚泰王(しょうたいおう)
・・ 尚育王の皇子。琉球最後の国王。琉球処分により東京へと移住させられた。
他にも、平良とみさん(おばぁ役)、御内原(うーちばら)の女官役にかたせ梨乃さん、
娼婦となった聞得大君の恋人役に遠藤憲一さんなど、素晴らしいキャストが勢揃いしています。
登場人物の人間模様に見る琉球国の状況
主人公の真鶴/寧温は、琉球国を武力を持たない独立国家として守るべく、
親友であり同僚の喜舎場朝薫と共に奔走します。
しかし国のためにひたむきに戦う寧温の姿は、いつしか朝薫に恋心を芽生えさせます。
更には、支配者であるはずの薩摩の役人、朝倉までもが、寧温に惹かれるようになる。
三人とも男同士のはずなのに。
自分の恋心に戸惑い否定しようとする三者三様の在り方が、
個人的にはとても美しく切ない感じがしました。
一方で、本来であれば琉球国を守る立場の聞得大君は、
自分の欲のため寧温を陥れ利用しようとします。
結果、王宮を追われ娼婦に身を落とす、という展開はもちろんフィクション。
しかし国政と神事が一体だった琉球国で、聞得大君が私利私欲に走ったというドラマの内容は、
当時の琉球国の内政が極めて不安定だったことを象徴しているように個人的には感じました。
さらに王府の不安定さにつけ込む存在として登場するのが、清からやってきた徐丁垓。
彼も寧温の正体を見破り、あろうことか真鶴を性的に支配し、利用しようとしました。
この頃の琉球国には、内外にたくさん敵がいたということを示しているようです。
この時代背景を理解すればするほど、真鶴が朝倉と女性としての幸せをつかめなかったこと、
寧温が王府の高官として琉球国を最後まで守り通すことができなかったことの両方が、
なんとも切ない物語です。
「テンペスト」琉球の歴史ドラマ どういう視点で見るか?
エンタメ作品として見る
男女の禁断の恋、宮廷内の権力争い、友情、サスペンスなど、
エンターテイメントの要素満載の「テンペスト」。
「この後、どうなるの?」とつい先を見たくなるハラハラドキドキのストーリー展開なので、
エンタメ作品として純粋に楽しめる、と個人的には思います。
貴重な文化歴史資料として見る
「テンペスト」の内容が一部、史実と違っているという指摘があることは
すでに紹介しました。
しかし舞台となった琉球国は実在した国であり、薩摩との関係や琉球処分といった、
歴史上の大きな出来事は実際に起こったことです。
「沖縄県」の歴史についてはなんとなく知っている人も、
琉球国のことは知らない人も多いのではないでしょうか?
更に、沖縄県になった経緯などの史実だけでなく、当時の人々の服装や暮らしぶりなども
感じることができるのがこの作品。
例えば、ドラマの中で出てくる色鮮やかな紅型(びんがた)、
「ウチナーカンプー」「カタガシラ」と言われる独特の髪結スタイル、
王府の役人の八巻(はちまち)という被りものなどは、江戸時代のファッションとは全く異なり、
本来、沖縄県内の博物館や歴史資料館等に足を運ばないと見られないようなものです。
つまりこのドラマは、琉球国の貴重な文化歴史を学べる作品として捉えることもできると思います。
文化人類学的視点で見る
少し大袈裟な言い方かも知れませんが、私はこの作品は沖縄の人々の精神性や価値観を学べる、
文化人類学的な要素が含まれていると思っています。
沖縄は第二次世界大戦中、地上戦が繰り広げられ多くの命が奪われた島。
戦後はアメリカの統治下に置かれた時期もありました。
しかし沖縄の悲しい歴史は、それよりもずっと前からあったことが、
このドラマを見れば分かります。
薩摩侵攻、そして琉球処分。
しかし非武装国家としての姿勢を崩さず、知力と外交だけで諸外国との関係を保とうとしてきた琉球。
「テンペスト」の中でも、役人たちの苦労が繰り返し描かれていました。
私はここに、琉球/沖縄の先人たちの精神性がよく表れていると思うのです。
それは、皆が共生共存する道を最後まで模索し続ける姿勢。
しかし現実には琉球は薩摩によって一方的に支配され、明治政府によって王府は解体されました。
作品の最後、明治政府によって送られてきた警察官が首里城を占拠した時、
聞得大君が
「いつかまた豊かな国を作ろうぞ」
そう言い放って、城から身を投げる場面があります。
(テレビドラマの方では、聞得大君は天に舞い上がっていきます)
私はその彼女の言葉を読んだ時、涙が溢れて止まりませんでした。
なぜなら、この言葉には琉球/沖縄の人々の精神性がよく表れていると思ったから。
理不尽さへの恨みではなく希望が込められた聞得大君の最後の言葉。
「いつか必ず国を復興させる」という言葉に、琉球の人々の美しく崇高な精神性を感じます。
「やったらやり返す」という報復の精神では、豊かさや繁栄は実現できないことを
琉球/沖縄の人々はずっと昔から知っていたのかも知れませんね。
「テンペスト」は、琉球/沖縄の人々の精神性が育まれた地政学的背景を知ることができる
作品と捉えることもできるのではないでしょうか。
まとめ
「テンペスト」は、池上永一さんによる小説「テンペスト」が原作のフィクションです。
しかしドラマの舞台となっている時代背景や歴史上の出来事は、史実に基づいています。
主人公である真鶴/寧温も架空の人物ですが、牧志朝忠という歴史上の人物が
モデルとなっている可能性があります。
この記事では、琉球という国が現在の沖縄県となるまでの歴史的背景を交え、
ドラマのあらすじや登場人物の相関関係を解説しました。
仲間由紀恵さんらキャスト陣の素晴らしい演技を楽しみつつ、
琉球という国の歴史と文化、彼らの豊かな精神性を知ることができるドラマ「テンペスト」。
仲間由紀恵さんのファンはもちろん、沖縄の文化や歴史に触れてみたい人、
片時も目が離せないスリリングなドラマが好きな人など、いろんな方におすすめです。
ドラマを見た後はぜひ、原作小説にも挑戦してみてほしいと思います。
私と同様、琉球という国の奥深い魅力にあなたもハマってしまうかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
こちらもぜひ併せてお読みください!

沖縄戦をテーマにした映画の記事はこちらから!





コメント