現代版組踊「肝高の阿麻和利」とは?誕生した背景、あらすじ、舞台の見どころ、今後の公演情報

現代版組踊「肝高の阿麻和利」をご存知でしょうか?

2000年、沖縄県うるま市に誕生した、子供たちの人材育成を目的とした、地元の中高生による舞台です。

当初、たった7人の中学生で始まった舞台は、昨年、25周年を迎え、県内外に多くのファンがいます。

この記事では、この奇跡の舞台が誕生した背景、物語のあらすじや登場人物をわかりやすくまとめました。

舞台の見どころや公演情報に関することも紹介していますので、是非、最後まで読んでください。

 

現代版組踊とは?「肝高の阿麻和利」が誕生した背景と発案者の想い

現代版組踊とは、沖縄の伝統芸能である「組踊」を現代風にアレンジした舞台です。

子供達の人材育成や町おこしの取り組みとして、沖縄県うるま市(当時の勝連町)で誕生しました。

その後、この取り組みは県内外に広まり、現代版組踊「肝高の阿麻和利」を皮切りに様々な現代版組踊の舞台が生まれました。

 

現代版組踊 「肝高の阿麻和利」が誕生したきっかけ

舞台の発案者は、当時の勝連町(現在のうるま市)の教育委員会教育長だった上江洲安吉(うえず あんきち)氏。

その頃、地域の子ども達を巡っては、夜間徘徊や不登校、事件、事故など、様々な問題がありました。

「子供達をなんとかしなくては」

そんな想いに駆られた上江洲氏は、子供達を元気にし、地域の良さを『感動体験』してもらう方法として、この舞台を思いつきました。

中学生という多感な時期に、周りの友達と力を合わせて何かを達成すること。

それぞれが自分にできる役割を果たせるよう一生懸命になること。

そして自分たちを支えてくれる大人たちへの信頼感や感謝の気持ちを持てるようになること。

教育者である上江洲氏は、これらの体験をすることが子供達の人格形成に大いに役立つと考えたのです。

そして、この舞台を通して、自分が生まれた町を誇りに思い、阿麻和利と同じように肝高く生きてほしい

そんな思いが、この舞台には込められています。

「肝高」とは、「志が高い」「気高い」「心豊か」といった意味。

 今、上江洲氏の思いは確実に子供達に届いているようです。

私はこの舞台に何度も足を運んでいますが、舞台に立っている子供達のあの誇らしい姿を見れば、それは一目瞭然です。

『肝高の阿麻和利』をとおして培った仲間との絆や達成感。

子供達にとっては、一生の宝となりこれからの人生で彼らをずっと支え続けていくだろうと、私は毎回舞台を観て感じます。

現代版組踊『肝高の阿麻和利』の時代背景、登場人物、あらすじをわかりやすく紹介!

この舞台を見れば、琉球王朝のことについて楽しく学べると思います。

私自身も、この舞台に足を運ぶうちに、これまであまり関心がなかった、琉球王朝の歴史に興味を持つようになりました。

時代背景

舞台となっているのは、琉球王朝第一尚氏6代目国王 尚泰久(しょうたいきゅう)(1415年〜1460年)の時代です。

尚泰久王は、琉球王国を統一に導いた初代国王、尚巴志(しょうはし)から見ると孫にあたります。

尚巴志の時代、琉球は北山、中山、南山という三つの勢力が争う戦国時代でした。

三山が統一され、統一国家が誕生したとは言え、国内の情勢はまだまだ不安定。

いつ内乱が起こってもおかしくない状況だったのです。

事実、5代目国王の尚金福(しょうきんぷく)が薨去後、1453年に「志魯、布里(しろ ふり)の乱」が勃発。

叔父と甥との間で起こった王位をめぐる骨肉の争いでした。

この争いで、首里城は焼け落ち、甥の志魯は死にました。

布里も都を追われ、結局、先代王の弟である尚泰久が即位することになったのです。

三山は一応、統一されたとは言え、琉球各地にいる按司たちの王府に対する不満は強く、いつ弓を引いてくるかわからない。

これが、阿麻和利が生きていた時代の時代背景です。

 

主な登場人物

阿麻和利 10代目勝連按司。金丸の策略にはまり、護佐丸を討伐するよう仕向けられた。その後、首里王府への謀反の疑いで滅ぼされる。

尚泰久  琉球王国6代目国王。金丸の進言により、娘の百十踏揚を阿摩和利に嫁がせる。

百十踏揚 (ももとふみあがり)尚泰久の娘。
阿麻和利との政略結婚を最初は嘆き悲しんでいたが、次第に心を寄せるようになる。

金丸(かなまる)首里王府の役人。護佐丸に謀反の嫌疑をかけ、阿麻和利に討たせる。また、大城賢雄を密偵として勝連城に送り、阿麻和利の隙をついて旅芸人に襲撃させる。

大城賢雄(うふぐしくけんゆう) 金丸の手下。百十踏揚が阿摩和利に嫁いだ際、付き人兼スパイとして勝連城に侵入する。

護佐丸(ごさまる) 中城の按司。三山時代、尚巴志と共に戦った武将。尚泰久の義理の父であり、百十踏揚の祖父でもある。

あらすじ

舞台は、現代の勝連に生きる10代の子供達が、『肝高の守り主』という、あの世の存在から巻き物を手渡されるところから始まります。

長い間、逆賊といわれてきた阿麻和利とは、一体どんな人物だったのか?

阿麻和利に何が起こったのか?

その真実をぜひ、突き止めてほしい。

その言葉と共に巻き物を手渡された3人の子供たち。

彼女らは、難しい方言で書かれている巻き物を読み進めていくのです。

舞台の前半は、阿麻和利が勝連の浜にサバニで流れ着くところから始まります。

※ サバニとは、沖縄で古くから使われている木の船

当時、茂知附按司による悪政下で大変苦しい生活を強いられていた勝連の民。

それを知った阿麻和利は、持ち前の機転で武力を使わずに茂知附を城から追い出すことに成功します。

阿麻和利の誠実で聡明な人柄は、勝連の平民の心を動かしました。

皆の合意のもと、阿麻和利は10代目勝連按司となります。

アジアと盛んに貿易を行い、勝連を繁栄させる阿麻和利。

中城湾をはさんで対岸にいるのは、かつて尚巴志と共に戦い三山を統一した強者の護佐丸。

阿麻和利と護佐丸。

武力、富、人望、全てにおいて二人は、首里王府にとっては危険な存在。

そこで尚泰久王の臣下である金丸が、阿麻和利と護佐丸を同時に滅ぼす策略を思いつきます。

舞台後半では、金丸の策略にはまった阿麻和利が、無実の護佐丸を死に追いやってしまいます。

そして阿麻和利自身も、勝利の祝い酒の席で旅芸人に扮した護佐丸の子供達(と称する殺し屋?)に不意を突かれ、深い傷を負うのです。

城の外には、阿麻和利に謀反の疑いあり、と勝連城に攻めてきた王府軍。

時すでに遅し。全ては金丸の策略と気づいた阿麻和利は、応戦しようとする家臣を止めます。

「手向かいするな。討ち死には、わし一人で十分だ。みんな心を一つにして琉球のために働いてくれーっ」

息も絶え絶えになりながら、この言葉を残し阿麻和利は崩れ落ちます。

 

以上が、『肝高の阿麻和利』の大まかなあらすじです。

個人的な印象ですが、この舞台を観た人は、阿麻和利を好きになるのは必須!

発案者の上江洲氏のねらい通り、舞台に立つ子供達は阿麻和利を誇りに思い、生きる上でのお手本にしていると思います。

現代版組踊「肝高の阿麻和利」人気を集めた秘密は?舞台の見どころ

今では、県内外に多くのファンがいる『肝高の阿麻和利』。

この舞台が人気を集めた理由は2つあると、個人的には思います。

一つは、最初にお伝えした、子供達の人格形成への取り組みとしての側面。

舞台に立っている子ども達をみれば、彼らにとって「肝高の阿麻和利」に参加したことは一生の宝になることは一目瞭然です。

たとえ、ステージの端の方であったとしても、笑顔で一生懸命踊っている子供。

自分に与えられた役割を精一杯にこなすことの大切さを体現しています。

自分たちを支えてくれた全ての人たちへの感謝の思いを語る、阿麻和利役の出演者の終わりの挨拶。

色んな人に支えられているから自分が舞台に立てている、ということを心から実感していることがよく伝わってきます。

私は、こういった子ども達の姿を見ると、現代版組踊の取り組みがもっと広まってほしいし、これからもずっと続いてほしいなと毎回、思います。

ここでいくつか、実際の子供達の言葉をご紹介します。

大人になっても、なんでも全力でやることを忘れなければ人生楽しいかなと思ってます

 

いつも支えてくれるお母さんには感謝しかないです

〜現代版組踊「肝高の阿麻和利」パンフレットより〜

周りの人のありがたみを知りました。みんなに支えてもらって恵まれているなって(略)

〜現代版組踊「肝高の阿麻和利」キャストインタビューより〜

人気の理由2つ目、みどころは、プロ顔負けの歌、踊り、そして演技でしょう。

まず歌と音楽。

これは、すべて子供達で担当しています。

私は最初にこの舞台を観た時に、まずそのことに衝撃を受けました。

中高生がこれほど安定感のある歌と演奏をできるなんて!

そしてもちろん、演技。

阿麻和利が死んでしまうシーンは、何度見ても涙なくしては観られません。

そして驚くことに、舞台に立っている子ども達も泣きながら演技をしています。

これほど役になりきり、演技ができること自体が本当にすごいと思うのは私だけでしょうか?

次に踊り。

現代版組踊、というだけあって、踊りは現代風のリズミカルでカッコいい踊りが観られます。

平田大一さんが手がけた「肝高の詩」をバックにした踊りなんか、圧巻です。

しかしその一方で、この舞台でしか見ることができない貴重な伝統芸能もあります。

「勝連地域に伝わる伝統芸能を盛り込むこと」

これは、発案者の上江洲安吉氏から出されていた条件だったそうです。

沖縄に住んでいてもなかなかお目にかかれない、踊りの数々。

どのようなものかご紹介しておきます。

 

平安名(へんな)のテンテンブイブイ

明治初期から勝連平安名地域に伝わる民族芸能。

非常に独特な衣装を着け、動きもかなり独特な踊り。

平敷屋(へいしきや)エイサー

エイサーとは旧盆に先祖を供養するために捧げる盆踊り。

うるま市平敷屋のエイサーは沖縄県内の他の地域とは衣装や動きが異なる。

踊り手の見事な隊列も見応えの一つ。

浜の京太郎(ちょんだらー)

明治時代に京都から伝わったと言われる踊り。

沖縄で「龕(がん)」といわれる棺のようなものを制作したり修理したりする際に踊られてきた。

 

参考文献:上江洲安吉+『きむたかの翼』編集委員会(2011) .『きむたかの翼 沖縄の中高生の舞台 「肝高の阿麻和利」の構想からの軌跡』. 長崎出版

 

昨年、現代版組踊『肝高の阿麻和利』は25周年を迎えました。

当初、わずか7人の中学生で始まった舞台が25年も続くことになるなんて、驚異としか言いようがありません。

個人的には、阿麻和利自身の志の高さと強い情熱が、上江洲氏、そして子供達へと乗り移ったかのように感じます。

この舞台の素晴らしさは、やはり観てもらうのが一番。

是非、一度はご覧になることを強くお勧めします。

現代版組踊「肝高の阿麻和利」今後の公演はいつ?公演情報をゲットするには?

今後の公演予定

現代版組踊「肝高の阿麻和利」今後の公演予定です。

2026年7月25日(土)と26日(日)『劇場版〜KIMUTAKA x RYUUJIN mix』が開催されます!

場所はうるま市きむたかホール。

「龍神伝説」という団体とのコラボステージになります。

私は去年、このステージを観に行きました。

「龍神伝説」のメンバーの太鼓、獅子舞、龍の舞などが、「肝高の阿麻和利」のステージをさらに盛り上げてくれてました。

ちなみに「肝高の阿麻和利」は若干の短縮バージョンとなっていますが、それでも十分見応えはあります。

「現代版組踊 肝高の阿麻和利」のFacebookに詳細、チケットの予約フォームのリンクがありますので、ぜひ、チェックしてみてください。

肝高の阿麻和利 公演情報をゲットする方法

毎年3月に卒業公演を行なっています。

土日の二日間、昼・夜公演と全部で4回の公演があります。

最終公演、つまり日曜日の夜公演は、その年の卒業生の最後の公演となるため、チケットも即完売。

私もいつもチケットを取り損なってしまいます。

公演情報をいち早く知るためには、現代版組踊「肝高の阿麻和利」のインスタグラムとFacebookをフォローしておくことをお勧めします。

また、不定期な公演として、過去には東京公演や、勝連城趾での「グスク公演」なども開催されました。

こちらは毎年開催されているわけではありませんので、やはりこまめにインスタグラムやFacebookをチェックするしかありません。

勝連城趾で行われる公演は、私も20252月に観にいきました。

すごく寒かったですけど、子ども達の一生懸命のパフォーマンスに寒さを忘れました。

次回の開催があれば、また絶対に観にいきます!

 

まとめ

琉球王国の正史「中山世鑑」では、逆賊とされている阿麻和利。

昔は勝連出身と言っただけで「逆賊アマンジャラーの子孫」と蔑まれるほどだったと言います。

そんな阿麻和利についての定説に異論を唱えたこ舞台。

すごく勇気のいる挑戦だったのではないでしょうか?

しかし、それもこれも、勝連に生まれ育った子供達のため。

自分の生まれた故郷のことを、そしてそこにいた英雄のことを誇りに思ってほしい。

そんな思いからスタートした現代版組踊「肝高の阿麻和利」。

今では、県外にも大勢ファンがいるほどの舞台となっただけでなく、同じような取り組みをする自治体もあります。

それを思うにつけ、阿麻和利の印象を大きく変えたこの舞台、そこに携わった全ての人々の熱き思いに感服せざるを得ません。

心が洗われるような感動を味わってみたい方、子供達の姿に元気をもらいたい方は、是非一度、この舞台に足を運んでみることをお勧めします。

最後までお読みいただいて本当にありがとうございました。

阿麻和利の人物像についてより詳しく知りたい方はぜひ、こちらの記事も読んでくださいね!

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